先ほどから、複雑な気持ちで、
彼女は上司の状況を見ていた。
「部長、ほどんどお酒がありませんわね。
私がお注ぎします」
「いいえ、今度は私が!!」
「こっちのお酒は、今持って来たから冷えてますわ」
他の課から誘われた飲み会である。
普段より女性が多い飲み会だった。
宴もしばらくすると、
斎藤の周りに女性が集まって来て、
我先にと、酌をする為に寄って来るのである。
しかも、こういう機会とばかりに、
なかなか離れようとしない。
全く、静かに飲めんのか…?
それにしても…
注がれるまま飲んでいた斎藤は、
半ば、うんざりしながら、
気になる秘書の方へと視線を辿れば…
膳に盛られている枝豆を取って
食べながら、こちらを見ていたが、
斎藤と目が合うと、
ぷいと視線を逸らした。
フン、無視する気か…。
「あっ!!部長?」
ふいに立ち上がった斎藤に、
周囲にいた女性達は驚き、
慌てて、
引き止めようとしたが、
当の本人は、無視して行った先は――
「どうだ、楽しんでるか?」
見上げると上司が、立っている。
彼女は眉をしかめて、
仕方なく脇に少し移動した。
斎藤は、すぐに座り込む。
「部長こそ、こんな所に来ないで、
あっちで楽しく飲んでいたらいいじゃないですか?」
「嫉妬か?
秘書が、また飲み過ぎていやしないか、
見に来てやっただけだ」
思い出しただろう?
と言わんばかりに
前例を持ち出し、皮肉っぽく
笑いながら言う。
「あ、あれはっ!!」
ふいに目の前に出された杯に、
彼女は目を落とす。
「まだ注いでもらってなかったな」
「…あっちの女性の方達にやってもらった方が、
いいんじゃないですか?
こんな所にいるより、賑やかで楽しいでしょうし」
「有能な秘書に注いでもらう為、
はるばる移動して来たんだよ」
あからさまなイヤミである。
「〜〜っ、分かりました!!」
ふくれっ面をしながら、周りを見て
近くにあった銚子を彼女は持ったのだが…。
「おい、そんな嫌そうな顔で注ぐ気か?
折角の酒がまずくなる」
「もうっ!!部長は結局飲めればいい…」
その時、勢いあまって、
酒は杯ではなく、斎藤の胸元に零れた。
「………あ」
酒に濡れたネクタイとシャツを斎藤は
視線を下げ、見下ろす。
「きゃあ〜」と女性達の喜声(?)が上がり、
これまた我先にと、ハンカチやタオルなど、
差し出したり準備しようとしたが、
「着替えもない事だし、
ひとまず帰るしかない。
うちの秘書に送ってもらうので…」
呆然としている秘書を斎藤は見る。
そうだよな?
琥珀の目で促してくる上司。
酒をかけてしまった当の本人だけに、
嫌とも言えず、
彼女は、ひきつった笑みで
頷いた。
部屋から出て行ってしまった
斎藤の後ろ姿を恨めしそうに、
または残念そうに溜息を吐く女性達が残されたのである。
「ったく、濡れた服など着てるもんじゃない」
自宅に戻ると斎藤は、すぐにネクタイを緩め始める。
「…あの部長、
私、責任取ります。
クリーニング代は必ずお支払いしますから!!
それに、濡れたままだと
風邪をひいてしまうかもしれませんし…」
「ま、それもそうだ。
では、脱がしてもらおうか?」
「…は?ぬっ、脱がす…って!!」
「クリーニングに出すんじゃ、
このシャツを持っていくんだろう?」
「それは…そうですけど…
自分で脱いだ方が早いんじゃあ…」
「つべこべ言ってないで、
さっさとしてもらおうか?
気持ち悪くて仕方がない」
迷っている彼女の様子を
相手は口元に笑みを浮かべて
早くしろ、とばかりに
面白そうに見ているだけである。
彼女は震える手でシャツに手を伸ばし、
ぎこちなくボタンを外してゆく。
「目を閉じてて、よく外せるもんだ…」
手探りで外してゆく彼女を見ながら、斎藤は呟いた。
「ほっといてください」
「じゃあ、そのまま閉じていろ」
ふわりと身体が宙に浮かんだかと思うと、
彼女は肩にかつがれていた。
「ど、どこに行くんですか?」
「風呂だ」
「!?」
「おい、暴れるな、落ちるぞ」
「一人で入って下さいっ!!
そ、それに、お風呂は滑ります、危険です」
「さっき言ってたな。
責任取ってくれるんだろう?
まぁ、危険だが、
案外、
楽しめるかもしれんぞ」
…確かに「責任は取る」と、
そう言ったけど。
そういう意味に取られるとは…
――
でも、この人だったら…
そういう意味に…取る。
自分の有利になるならば、
曲解すらしてだって…。
「どうした?何か言ったか?」
彼女を肩に載せたまま、
わざとらしく
余裕たっぷりといった口調で
斎藤は尋ねてきた。
「いつもそうやって企んで…」
「企む?
人聞きの悪い事を…」
充分、人が悪いクセに…。
唇をかんだまま、
がっくりと彼女は身体の力を抜いた。
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上月さんから頂いた斎藤部長です〜vv
鎖骨ばっちり、はだける胸元…うひゃ〜(ぱたり)
フェロモンが放たれてますよぉ〜!!!
鼻血出して、イラストを見ているうちに
余計な駄文を思いついて、
書いてしまいました
(す、すいません…マンネリ設定で)
上月さん、どうもありがとうございましたvvv